eスポーツのビジネスを動かす:営業・スポンサー獲得の仕事、必要なスキル、未経験からの挑戦
eスポーツ業界は世界的に急速な成長を続けており、その熱狂的なコミュニティと市場規模の拡大は多くの企業の注目を集めています。この成長をビジネスとして支え、持続可能なものにするためには、企業の資金的な支援、すなわちスポンサーシップが不可欠です。そして、そのスポンサーシップを獲得し、eスポーツと企業を結びつける役割を担うのが、営業・スポンサーシップ担当の仕事です。
プロゲーマーやイベント運営といった華やかな側面が注目されがちですが、eスポーツをビジネスとして成立させる上では、この営業・スポンサーシップの仕事は非常に重要です。今回は、eスポーツ業界における営業・スポンサーシップ獲得の仕事について、その内容、求められるスキル、そして未経験からこの分野を目指すための道筋を掘り下げて解説します。
eスポーツ業界における営業・スポンサーシップ獲得の仕事内容
eスポーツ業界における営業・スポンサーシップ獲得の仕事は、単に「物を売る」という一般的な営業とは異なり、無形のリソース(例えば、チームのロゴ露出、大会の冠協賛、選手の肖像権活用など)を通じて、スポンサー企業がeスポーツというプラットフォームを活用し、自社のブランドイメージ向上、商品・サービスのプロモーション、顧客エンゲージメント強化といった目標を達成できるよう支援することにあります。
具体的な業務内容は、所属する組織(チーム、大会運営会社、リーグ、メディア企業など)によって多少異なりますが、概ね以下のようなステップで進行します。
- ターゲット企業の選定: 自社のコンテンツやファン層に合ったスポンサー候補企業をリサーチ・選定します。IT企業、飲料メーカー、自動車メーカー、アパレルブランドなど、様々な業種の企業が対象となり得ます。
- 提案資料の作成: スポンサー企業にとってどのような価値を提供できるのか、具体的なメリット(ターゲット層へのリーチ、ブランド認知度向上効果、特別プロモーションの実施など)を明確に盛り込んだ提案資料を作成します。データに基づいた分析(視聴者データ、SNSエンゲージメントなど)も重要です。
- アプローチと交渉: 選定した企業に対し、電話やメール、紹介などを通じてアプローチし、商談の機会を設定します。商談では、作成した提案資料を用いて、自社の魅力を伝え、スポンサーシップの獲得を目指します。企業の要望を聞き、win-winの関係を築けるよう条件交渉を行います。
- 契約締結と履行サポート: 合意に至った場合は、法務部門と連携しながら契約書を作成し、締結します。契約締結後も、スポンサーメリットが計画通りに履行されているかを確認し、必要に応じて調整や追加提案を行います(これをアクティベーションサポートと呼ぶこともあります)。スポンサー企業との良好な関係を維持することが継続的な支援に繋がります。
- 成果報告: スポンサーシップによって企業にどのような成果をもたらしたのかを、データを用いて報告します。次年度の契約更新や、より規模の大きい契約に繋げるための重要なプロセスです。
単に契約を取るだけでなく、パートナーとしての企業の成功を支援し、長期的な関係を構築することが求められる仕事です。
この仕事に求められるスキル
eスポーツ業界の営業・スポンサーシップ獲得の仕事で活躍するためには、以下のようなスキルや資質が重要になります。
- コミュニケーション能力: 社内外の多くの関係者と円滑に連携するための基本的な能力です。特に、企業担当者のニーズを正確に把握し、自社の強みを分かりやすく伝える会話力、傾聴力が求められます。
- 提案力・プレゼンテーション能力: スポンサー企業に対して、自社の価値やメリットを効果的に伝える提案資料を作成し、魅力的なプレゼンテーションを行う能力は必須です。eスポーツならではの魅力を、ビジネスの言葉に翻訳して伝える力が重要になります。
- 交渉力: 契約条件を交渉し、双方にとって納得のいく結論を導き出す力です。落としどころを見つけつつ、自社の利益も守るバランス感覚が求められます。
- 業界知識: eスポーツ業界全体のトレンド、人気タイトル、コミュニティの特性、主要なプレイヤー(チーム、選手、大会主催者、パブリッシャーなど)についての基礎知識はもちろんのこと、スポンサー候補企業の業界やビジネスモデルについても理解を深める必要があります。
- 分析力・課題解決能力: 市場データ、視聴データ、エンゲージメントデータなどを分析し、スポンサー企業が抱える課題を特定し、それに対するeスポーツを活用した解決策を提案する力が求められます。
- 語学力: グローバルな案件に関わる場合や、海外のチーム・リーグとの連携がある場合は、英語などの語学力が強みになります。
- 熱意と探求心: 変化の速いeスポーツ業界において、常に新しい情報やトレンドを学び続け、情熱を持って仕事に取り組む姿勢が成功に繋がります。
未経験からこの職種を目指すには
営業やスポンサーシップ獲得の経験がない状態からeスポーツ業界のこの職種を目指すことは、決して不可能ではありません。異業種での経験を活かし、戦略的にステップを踏むことが重要です。
- 基本的なビジネススキルの習得: 営業経験がなくても、コミュニケーション能力、プレゼンテーション能力、資料作成能力などの基本的なビジネススキルは多くの職種で培うことができます。学生であれば、インターンシップやビジネス関連のセミナー参加などが有効です。社会人であれば、現在の仕事でこれらのスキルを意識的に磨くことが重要です。
- eスポーツ業界に関する知識の深化: eスポーツ関連のニュースを追う、様々なタイトルの大会配信を視聴する、関連書籍を読むなど、業界に関する知識を積極的に吸収します。可能であれば、業界関係者が集まるイベントやカンファレンスに参加し、肌感覚を掴むことも有効です。
- マーケティングやブランディングの基礎知識の習得: スポンサーシップは企業のマーケティング・ブランディング戦略の一環として行われます。企業の目的を理解するために、マーケティングやブランディングに関する基礎知識を独学やオンライン講座で学ぶことが役立ちます。
- 異業種での営業経験を積む: eスポーツ業界に直接関係のない分野であっても、法人営業の経験は大きな強みになります。顧客のニーズを把握し、提案・交渉を行うプロセスは共通しているため、異業種で実績を積んでからeスポーツ業界へ転職するというキャリアパスも考えられます。
- 業界との接点を作る: eスポーツ関連企業でのインターンシップやアルバイト、ボランティア活動に参加することで、業界内部の雰囲気を知ることができ、人脈形成にも繋がります。求人情報だけでなく、企業の採用ページやSNSなども積極的にチェックし、募集がないか確認することが重要です。
- 自身の強みとeスポーツへの熱意をアピール: 職務経歴やスキルに加え、なぜeスポーツ業界で営業・スポンサーシップの仕事に就きたいのか、どのような貢献ができるのかといった熱意を具体的に伝えることが重要です。
仕事の魅力と現実
eスポーツ業界で営業・スポンサーシップ獲得の仕事に就くことには、大きな魅力と同時に、現実的な厳しさも存在します。
魅力:
- 業界の成長に貢献できるやりがい: 自らが獲得したスポンサー資金が、チームの強化や大会の成功に直結し、業界全体の発展に貢献していることを実感できます。
- 多様な企業との関わり: eスポーツに可能性を見出す様々な業種の企業と関わることで、幅広いビジネス知識や視点を得られます。
- 大きな成果を上げたときの達成感: 数百万、数千万円といった規模の契約をまとめ上げたときの達成感は非常に大きいでしょう。
- 変化と刺激: 新しい取り組みやトレンドが次々と生まれる業界であり、常に新しい情報やビジネス機会に触れることができます。
現実:
- 高い目標設定: 企業の収益に直結する職種であるため、売上目標が厳しく設定されることが多いです。
- 厳しい競争: eスポーツ業界への注目が高まるにつれて、スポンサー獲得競争も激化しています。
- 契約までの労力: 多くの企業にアプローチし、数多くの提案を行っても、実際に契約に至るのは一部であり、根気強い活動が必要です。
- 業界理解の壁: eスポーツについて十分に理解していない企業担当者に対し、その価値や魅力を分かりやすく伝えるための丁寧な説明が求められます。
まとめ
eスポーツ業界における営業・スポンサーシップ獲得の仕事は、業界の成長を根幹から支える、非常に重要でやりがいのある職種です。高いコミュニケーション能力、提案力、そしてeスポーツへの深い理解が求められますが、未経験からでも異業種でのビジネス経験を活かし、適切な知識を習得することで十分に挑戦可能な分野です。
この仕事を通じて、あなたはeスポーツの持つ無限の可能性を、ビジネスの力でさらに広げていく最前線で活躍できるでしょう。eスポーツへの情熱を、ビジネススキルと結びつけ、このエキサイティングな業界でキャリアを築くことを検討してみてはいかがでしょうか。