eスポーツの国際舞台を創る仕事:海外事業・ローカライズのキャリアパス
eスポーツのグローバル化と広がる国際的なキャリア
eスポーツは今や国境を越え、世界中の人々を熱狂させる一大エンターテイメントへと成長しています。日本国内だけでなく、世界各地でプロリーグが開催され、国際大会には多くのファンが集まります。このようなeスポーツの急速なグローバル化に伴い、活躍できる仕事の幅も国際的に広がっています。
プロゲーマーとして海外のチームに所属したり、国際大会でプレーしたりする道はもちろんありますが、それ以外の様々な職種においても、グローバルな視点やスキルが求められる機会が増えているのです。本稿では、eスポーツ業界における「国際舞台を創る」仕事、特に海外事業、ローカライズ、そしてそれらに関わるキャリアパスについて掘り下げていきます。
海外事業展開を担う仕事
eスポーツ関連企業(ゲームパブリッシャー、大会運営会社、チーム、関連サービス提供企業など)が海外市場に進出したり、既存の海外事業を拡大したりする際に中心的な役割を果たすのが、海外事業部門や国際部門の仕事です。
仕事内容の具体例
- 市場調査・戦略立案: 進出を検討する国や地域のeスポーツ市場(プレイヤー人口、人気タイトル、競合、法規制、文化など)を調査し、最適な事業戦略やマーケティング戦略を策定します。
- パートナーシップ構築: 現地の企業(パブリッシャー、メディア、スポンサー、運営会社など)と提携関係を構築したり、ライセンス交渉を行ったりします。
- 事業立ち上げ・運営: 現地法人の設立支援、事業計画の実行管理、予実管理、現地のチームや運営組織との連携を行います。
- 広報・渉外: 現地のメディア対応、政府や関連団体とのコミュニケーションを担当することもあります。
求められるスキル・資質
最も重要なのは、語学力です。特に英語は必須とされる場合が多く、それに加えて事業を展開する地域の言語能力があれば大きな強みとなります。また、国際ビジネスに関する知識や経験、異文化理解力、そして高いコミュニケーション能力と交渉力も不可欠です。現地の状況を理解し、柔軟に対応できる適応力も重要となります。
eスポーツコンテンツのローカライズに関わる仕事
eスポーツでは、ゲームそのものだけでなく、大会配信、ウェブサイト、SNS投稿、プロモーション資料など、様々なコンテンツが生成されます。これらを海外のユーザーが理解し、楽しめるようにするためには、単なる翻訳以上の「ローカライズ」が必要です。
仕事内容の具体例
- 翻訳・カルチャライズ: ゲーム内のテキスト、実況・解説の字幕、ウェブサイトの文章、マーケティングコピーなどを、現地の言語に翻訳し、文化的なニュアンスや慣習に合わせて調整します。
- 用語集・スタイルガイド作成: 特定のゲームやチーム、大会などで使用される専門用語や固有表現の統一を図るためのガイドラインを作成・管理します。
- 品質管理: ローカライズされたコンテンツに不自然な表現や誤りがないかチェックし、品質を保証します。
- プロジェクト管理: 外部の翻訳会社やフリーランサーとの連携、スケジュールの管理を行います。
求められるスキル・資質
高い語学力と翻訳・編集スキルが基本となります。対象言語の知識はもちろん、ソース言語(多くは日本語や英語)を正確に理解する力が必要です。また、対象地域の文化や習慣、インターネットスラングなどへの深い理解が求められます。eスポーツに関する知識やゲームへの理解も、より適切な表現を選ぶ上で役立ちます。細部への注意深さや、複数のプロジェクトを同時に管理する能力も重要です。
国際大会・イベント運営を支える仕事
世界中から選手やチームが集まる国際大会やイベントの成功には、円滑な運営が不可欠です。ここでは、通常のイベント運営業務に加えて、国際的な要素に対応する専門的な業務が発生します。
仕事内容の具体例
- 海外選手・チームサポート: 選手やチームの招待、ビザ取得支援、航空券・宿泊手配、会場でのアテンドなど、渡航から滞在中のサポートを行います。
- 国際放送対応: 海外の放送局や配信プラットフォームとの連携、多言語での実況・解説の手配や調整を行います。
- 通訳・翻訳手配: 記者会見やインタビュー、ミーティングなどで必要となる通訳者や翻訳者の手配、資料の翻訳を行います。
- 国際的なレギュレーション対応: 世界的な競技ルールや規約、各国の法規制に則った運営を行います。
求められるスキル・資質
イベント運営の基本的なスキルに加え、高い語学力と国際的なコミュニケーション能力が必須です。様々な国籍や文化背景を持つ人々との円滑なやり取りが求められます。予期せぬトラブルにも冷静に対応できる問題解決能力や、タイトなスケジュールを管理する能力も重要になります。ビザや渡航に関する専門知識も役立ちます。
未経験から国際的なeスポーツキャリアを目指すには
これらの国際的な仕事は、高い専門性や経験が求められる場合が多いですが、未経験から全く道がないわけではありません。
- 語学力の向上: まずはこれが最も基本的なステップです。TOEICやTOEFLなどのスコア取得を目指すだけでなく、実際のビジネスシーンで使える実践的な会話力・ライティング能力を磨きましょう。
- 関連分野での経験: 国際ビジネス、貿易、翻訳・通訳、イベント企画、海外営業、国際交流などの分野で経験を積むことが、eスポーツ業界で国際的な仕事に就くための足がかりとなります。eスポーツとは直接関係がなくても、汎用的なスキルや知識は高く評価されます。
- eスポーツ業界での経験: まずは国内のeスポーツ関連企業で、可能な職種(マーケティング、運営、広報など)として経験を積むことも有効です。業界の仕組みやプレイヤー、コミュニティへの理解を深めることは、国際的な業務においても役立ちます。
- 海外経験: 留学やワーキングホリデーなど、海外での生活や就労経験は、語学力だけでなく異文化理解力や適応力を高める貴重な機会となります。
- インターンシップ・ボランティア: eスポーツ関連企業や国際大会でのインターンシップやボランティアは、実務経験を積み、業界内のネットワークを構築する絶好の機会です。
国際的なeスポーツキャリアの魅力と挑戦
国際的なeスポーツの仕事は、世界の最前線で活躍できる、非常にダイナミックでやりがいのある分野です。様々な国の文化に触れ、多様なバックグラウンドを持つ人々と共に働くことで、自身の視野を大きく広げることができます。自身の語学力や国際経験を活かしたいと考えている方にとっては、魅力的なキャリアパスとなるでしょう。
一方で、時差のある海外とのやり取り、文化や慣習の違いによる難しさ、予期せぬトラブルへの対応など、挑戦も多くあります。常に学び続け、柔軟に対応していく姿勢が求められます。
まとめ
eスポーツのグローバル化は今後も加速していくと予想されており、国際的な舞台で活躍できる人材の需要はますます高まるでしょう。海外事業、ローカライズ、国際大会運営といった分野は、プロゲーマー以外のeスポーツキャリアとして、非常に大きな可能性を秘めています。
これらの仕事に興味を持たれた方は、まずは自身の語学力やこれまでの経験を見つめ直し、どのようなスキルや経験が活かせるか、あるいはこれから身につけるべきかを具体的に考えてみてください。そして、まずは国内で経験を積むことも含め、具体的な一歩を踏み出してみることをお勧めします。国際的な舞台での活躍は、きっとあなたのキャリアをより豊かにしてくれるはずです。