eスポーツ業界の人事・採用担当:仕事内容、必要なスキル、未経験からの挑戦
eスポーツ業界は、プロゲーマーだけでなく、多様な職種によって支えられています。その中でも、組織の成長と活性化に不可欠な役割を担うのが「人事・採用担当」です。このコラムでは、eスポーツ業界における人事・採用担当の仕事内容、求められるスキル、そして未経験からこの分野に挑戦するための道筋について解説します。
eスポーツ業界における人事・採用担当の役割
人事・採用担当は、企業の「ヒト」に関するあらゆる業務を担当します。eスポーツ業界においても、その基本的な役割は変わりませんが、業界特有の事情や文化を理解し、柔軟に対応することが求められます。
主な仕事内容は以下の通りです。
- 採用活動:
- 必要な人材像の定義、求人情報の作成・掲載。
- 応募書類の選考、面接設定・実施。
- 採用媒体やエージェントとの連携。
- 内定者フォロー、入社手続き。
- プロゲーマー、コーチ、アナリスト、チーム運営スタッフ、イベントディレクター、マーケター、エンジニア、デザイナーなど、多岐にわたる職種の採用に関わります。特にプロゲーマーやタレントに関する採用は、一般的な企業の採用とは異なる視点が必要となる場合があります。
- 労務管理:
- 雇用契約の締結、管理。
- 勤怠管理、給与計算、社会保険手続き。
- 就業規則や各種規程の整備・運用。
- ハラスメント対策、メンタルヘルスケアなど、従業員が安心して働ける環境づくり。
- 選手の契約や移籍、大会出場時の特殊な労働時間など、業界ならではの労務課題に対応する必要があります。
- 人事評価・育成:
- 人事評価制度の企画・運用。
- 社員の目標設定支援、フィードバック実施。
- 研修プログラムの企画・実施、キャリアパスの設計支援。
- 選手のスキルアップだけでなく、裏方スタッフの専門性向上もサポートします。
- 組織開発・制度設計:
- 組織課題の分析、改善策の提案・実行。
- 福利厚生制度の企画・拡充。
- 企業文化の醸成、従業員エンゲージメント向上施策。
- 多様なバックグラウンドを持つ人材が集まる組織を、どのように活性化させていくかを考えます。
eスポーツ業界は変化が速く、新たな職種が生まれることもあります。人事・採用担当は、常に業界の動向を把握し、組織が必要とする人材をタイムリーに確保し、既存の従業員が能力を最大限に発揮できる環境を整備していく役割を担っています。
eスポーツ業界の人事・採用担当に求められるスキルと資質
人事・採用の専門知識に加え、eスポーツ業界で働く上で重要となるスキルや資質があります。
- 人事・労務に関する基礎知識:
- 労働基準法、雇用保険法、社会保険関連法規などの基本的な知識は必須です。
- 公正な評価制度や報酬体系に関する知識も役立ちます。
- 高いコミュニケーション能力と調整力:
- 経営層、現場のマネージャー、選手、そして求職者など、様々な立場や価値観を持つ人々との円滑なコミュニケーションが求められます。
- 利害関係を調整し、合意形成を図る能力も重要です。
- 公平性・コンプライアンス意識:
- 採用選考や人事評価において、差別なく公正な判断を行うための高い倫理観が必要です。
- 個人情報の取り扱いや、各種法規制遵守に対する意識も不可欠です。
- eスポーツ業界への深い理解と熱意:
- 単なるゲーム好きというだけでなく、業界の構造、ビジネスモデル、各タイトルのコミュニティ特性などを理解していると、より適切な人材採用や制度設計に繋がります。
- 業界への貢献意欲が高いことも、モチベーション維持に重要です。
- 変化への対応力と柔軟性:
- 成長産業であるeスポーツ業界は、組織体制や事業内容が常に変化します。予期せぬ状況にも冷静に対応し、新たな課題に対して柔軟な発想で取り組む姿勢が求められます。
- 秘密保持と信頼性:
- 人事情報は非常に機密性が高いため、情報を適切に管理し、関係者からの信頼を得られる誠実さが重要です。
これらのスキルや資質は、前職での経験や、日々の業務、自己学習を通じて習得・向上させていくことが可能です。
未経験からeスポーツ業界の人事・採用担当を目指すには
人事・採用業務の経験がない場合でも、eスポーツ業界でこの仕事に就くことは可能です。具体的なステップや考え方をご紹介します。
- 一般的な企業で人事・採用の実務経験を積む: eスポーツ業界に特化した人事担当の求人は、現時点では経験者を求めるケースが多く見られます。まずは業界問わず、企業規模を問わず、人事・採用アシスタントや担当者として実務経験を積むことが、最も確実な道の一つです。中小企業であれば、幅広い人事・労務業務に携われる機会が多いかもしれません。
- 人事・労務関連の知識を体系的に学ぶ: 資格取得を目指す必要はありませんが、労働法や社会保険、採用手法、評価制度などに関する基本的な知識は書籍やオンライン講座で学ぶことができます。これらの知識は、実務に直結するため非常に役立ちます。
- eスポーツ業界への理解を深める: 業界ニュースをチェックする、関連イベントに参加する、esports関連のビジネス書を読むなど、多角的にeスポーツ業界に関する情報を収集し、自身の言葉で業界について語れるようになることが大切です。採用面接等で熱意や業界への理解をアピールできるようになります。
- eスポーツ業界との接点を持つ: 業界内のネットワークは重要です。eスポーツ関連の勉強会や交流会に参加したり、SNSで業界関係者をフォローしたりすることで、情報収集や人脈形成に繋がる可能性があります。また、eスポーツ関連企業でのアルバイトやインターンシップを通じて、業界の雰囲気を掴むことも有効です。必ずしも人事職でなくても、運営アシスタントや広報補助など、他の職種で業界に入り、内部から人事部門への異動を目指す道も考えられます。
- 自身のキャリアプランを明確にする: なぜeスポーツ業界で人事の仕事をしたいのか、どのような経験を積んでいきたいのかを具体的に考えることで、応募書類や面接での説得力が増します。「未経験からでも貢献できること」を具体的に提示できるように準備を進めてください。例えば、「前職での〇〇の経験は、eスポーツ業界の多様な人材のマネジメントに活かせると考えます」のように、自身の経験と業界の特性を結びつけて説明できるよう整理しておくと良いでしょう。
未経験からの挑戦は、学習意欲と行動力が鍵となります。地道な努力を重ね、チャンスを掴む準備を進めることが重要です。
まとめ
eスポーツ業界における人事・採用担当は、組織の成長と従業員の活躍を支える、非常に重要な役割です。採用活動から労務管理、人材育成、組織開発まで、幅広い業務を通じて業界に貢献することができます。
この分野で働くためには、人事・労務の基礎知識に加え、高いコミュニケーション能力、公平性、そしてeスポーツ業界への深い理解が求められます。未経験から目指す場合は、まずは一般的な人事の実務経験を積むこと、関連知識を学ぶこと、そして何より業界への理解を深め、積極的に接点を持つことが大切です。
eスポーツ業界を「人」という側面から支えたいという情熱があるならば、人事・採用担当は魅力的なキャリアパスの一つとなるでしょう。この記事が、あなたのキャリアを考える上で一助となれば幸いです。